本屋さんで平置きされていたことと、著者が大好きな「コンビニ人間」を書いた村田沙耶香さんであったことから読み始めた「世界99」作品の中身は、正直言って、グロテスク・凄惨(せいさん)な表現が含まれます。「気持ち悪い」と思う描写も数多くあります。
でも、最後まで一気に読みたくなる、そんな小説です。
850ページ超えの長編大作「世界99(上巻・下巻)」を読んだ感想を書きました。
⚠️ 読者の方へ先にお伝えしたいこと
本作には、一部「過激な暴言」や「ショッキングな肉体描写(刺激の強い表現)」が含まれています。苦手な方はあらかじめ心の準備をして読み進めていただくか、ご注意ください。
「世界99(上巻・下巻)」あらすじ
この世はすべて、世界に媚びるための祭り。
性格のない人間・如月空子。
彼女の特技は、〈呼応〉と〈トレース〉を駆使し、コミュニティごとにふさわしい人格を作りあげること。「安全」と「楽ちん」だけを指標にキャラクターを使い分け、日々を生き延びてきた。
空子の生きる世界には、ピョコルンがいる。
ふわふわの白い毛、つぶらな黒い目、甘い鳴き声、どこをとってもかわいい生き物。
当初はペットに過ぎない存在だったが、やがて技術が進み、ピョコルンがとある能力を備えたことで、世の中は様相を変え始める。
- 著者:村田沙耶香
- 出版社:集英社
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「世界99」著者 村田沙耶香さんについて
2003年「授乳」で群像新人文学賞(小説部門・優秀作)受賞。
2009年『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞、2013年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島賞、2016年「コンビニ人間」で芥川賞受賞。
著書に『マウス』『星が吸う水』『ハコブネ』『タダイマトビラ』『殺人出産』『消滅世界』『生命式』『変半身』『丸の内魔法少女ミラクリーナ』『信仰』などがある。
「世界99(上巻・下巻)」の感想
学校の自分、会社の自分、友達といる時の自分、そして家族の前の自分。 私たちは無意識のうちに、場所や相手に合わせて「心地よいキャラクター」を使い分けて生きていないでしょうか。
今回ご紹介する村田沙耶香さんの小説『世界99』は、そんな現代を生きる私たちが心の奥底に隠している「息苦しさの正体」を、暴き出してくれる物語です。
主人公・空子の「やばい特技」は、本当に他人事?
物語の主人公は、如月空子(きさらぎ そらこ)。 本のあらすじには、彼女のことがこう紹介されています。
性格のない人間・如月空子。 彼女の特技は、〈呼応〉と〈トレース〉を駆使し、コミュニティごとにふさわしい人格を作りあげること。「安全」と「楽ちん」だけを指標にキャラクターを使い分け、日々を生き延びてきた。
『世界99』単行本上巻の帯より引用
これだけを読むと、「なんだか凄く特殊で、やばい人の話なのかな?」と思ってしまうかもしれません。確かに読み進めていくと、彼女の行動に「えっ?」と驚かされる部分もあります。
でも、読み進めていくうちに、
「これって、私にそっくりじゃない?」
こう思うようになりました。
完全に1人で生きている人間はいない。私たちがまとう「いくつもの顔」
空子のやっていることを平たい言葉で言えば、「八方美人」であり「長いものに巻かれる」ということ。
でもそれって、誰もが多かれ少なかれやっていることではないでしょうか。
私たちは誰もが、何らかの「コミュニティ」に属して生きています。
- 家族という場所では、なんとなくある上下関係に従って役割を演じる。
- 会社に行けば、上司に好かれるような、あるいは怒られないようなキャラになる。(逆に立場が上なら、部下に舐められないキャラを演じる)。
- 友達の前では、相手に合わせて盛り上がりそうな話題を選び、「わかるー!」「私もそう!」と共感の言葉を口にする。
生き延びるために、うまく回していくために、いくつもの自分を作る。
そうやって考えていくと、「私自身も、空子と一緒で中身は空っぽなんじゃないか……」と、なんだかゾクゾクしてくるのです。
人間関係がめんどくさい時代の、究極の問い
作中では、そんな「ひとがひととして生きることの息苦しさ」がリアルに描かれています。
実は本作には、目を背けたくなるような過激な暴言や、SF的でグロテスクな肉体描写(凄惨なシーン)が数多く登場します。正直、万人受けする作品ではありません。
もしも、人間関係や日々の生活の中で「めんどくさい」と感じることを、自分の代わりに完璧にやってくれる存在が目の前に現れたとしたら。私たちは果たして、本当の意味で幸せになれるのでしょうか。
それとも、自分という存在がどんどん消えていく恐怖に怯えることになるのでしょうか。
救われるか、気持ち悪くなるかはあなた次第
『世界99』は、読み終わったあとに心地よいハッピーエンドが待っているような、単純な物語ではありません。
この物語を読んだあと、「救われた」と思うか、「気持ち悪い」とゾッとするかは、あなた次第。
日々、誰かに合わせて生きることに少しだけ疲れてしまったあなたへ。
ぜひスマホの電源を切って、この「もう一つの世界」を覗いてみませんか?
最後まで読んでいただきありがとうございました!


